「コンサルに任せたから自分は知らない」は通用しない
補助金不正受給で摘発された経営者が、よく口にするセリフ:
「コンサルに任せていたので、自分は内容を知らなかった」
この言い分は、法的には通用しない。最終責任は申請者である経営者本人にある。コンサルに丸投げすることは、不正に巻き込まれるリスクを自ら高めていることに他ならない。
なぜ丸投げが不正の温床になるか
構造1:コンサルが過剰最適化する
事業者の知識ゼロを前提に、コンサルが「採択させるため」に内容を盛るケース:
- 売上計画を実態より高く設定
- 経費を相場より高く見積もる
- 加点項目を実態と異なる形で取得
経営者は「コンサルが書いてくれた」と確認せずに署名。後の検証で実態との乖離が露見。
構造2:意図せぬ虚偽記載
コンサルが申請書に書いた内容が、経営者から見ると微妙に違うケース:
- 「自社で開発」と記載 → 実は外注
- 「県内に拠点あり」と記載 → 実は本社のみ
- 「賃上げ実施予定」と記載 → 実は計画なし
経営者が読まずに署名すると、虚偽記載の責任は経営者に及ぶ。
構造3:実績報告でのズレ
申請段階の事業計画と、実際の事業内容がズレた時、経営者が把握していないため軌道修正できない。
- コンサルが「報告書も任せて」と言うが、内容を経営者が確認しない
- 結果として、申請内容と実態が乖離していても気づかない
実際にあったケース:丸投げ経営者の悲劇
ケース1:水増し請求に関与したと判定された経営者
製造業A社(売上3億円、従業員30人)の社長。補助金申請を有名コンサルに丸投げ。
実態:
- コンサルが業者と組んで、500万円の機械を800万円で見積
- 差額300万円のうち200万円がキックバックでコンサルに
- 社長は内容を一切確認せずに発注
摘発時の言い分:
- 「コンサルに任せていた」
- 「キックバックの存在は知らなかった」
判決:社長は補助金適正化法違反(虚偽申請)の共謀者として責任を追及。経営者が「知らなかった」では免責されない。
ケース2:賃上げ未達成で発覚
サービス業B社の社長。「賃上げ加点」をコンサルが申請書に書いて採択。
実態:
- 経営者は賃上げ計画を社内で議論したことがない
- コンサルが勝手に「年率1.5%の賃上げ」と表明
- 採択された
3年後の検証:
- 実績は賃上げゼロ
- コンサルとは既に契約終了
- 補助金返還命令+次回以降の申請から実質除外
社長の本音:「賃上げ加点なんて、書類上の話だと思っていた」
経営者が必ず確認すべき5項目
1. 申請書の事業計画書を全文読む
- コンサルが書いた内容を、最低1回は通読
- 違和感ある記述は質問
- 数字の根拠を確認
2. 経費見積書の内訳を見る
- 業者からの見積を直接確認
- 相場感をネット検索などで把握
- 不自然に高い項目はないか
3. 加点項目の中身を理解
- 賃上げ表明:実現可能か社内で議論
- パートナーシップ構築宣言:手続きを把握
- 経営革新計画:自社が本当に対応可能か
4. 採択後の責務を把握
- 実績報告のスケジュール
- 事業化状況報告(5年間)
- 処分制限期間中のルール
5. コンサル契約書のサービス範囲
- 申請書作成のみか、採択後フォローも含むか
- 不採択時・トラブル時の対応
- 5年間の伴走有無
「丸投げではない関わり方」の作法
「全部自分でやる」必要はない。コンサルの専門性を活用しつつ、最終決定者として関与するバランスが正解。
コンサルに任せて良いこと
- 制度選定の助言
- 計画書の構造化
- 文章の磨き込み
- 加点項目の手続き支援
- 採択後の事務手続き
経営者が必ず関わるべきこと
- 事業の必然性の言語化
- 売上計画の現実性判定
- 賃上げ・投資判断
- 申請書最終チェック・署名前の通読
- 実績報告書の内容確認
TORUQが「健全な関わり方」を支える
TORUQに登録された認定コンサルは、経営者を巻き込んだヒアリングを前提にしている。
「全部任せてください」ではなく、「一緒に作りましょう」と言うコンサルが、本来の補助金活用の伴走者。
事業者を不正に巻き込まないためにも、選び方の段階でコンサルのスタンスを見極めることが重要。
※本記事は補助金活用における経営者の関与の重要性を伝えるための一般化された事例整理です。